寮美千子「あふれでたのはやさしさだった~奈良少年刑務所・絵本と詩の教室」感想

こんにちは!

マダム・アフロよ。

絵本って素敵よね~。。

子どもはモチロン、大人になっても

その濃縮されたエッセンス・世界観に

心奪われることが多い今日この頃。

そのポテンシャルを活かして

なんと少年刑務所で絵本を使った

プログラムを行っていたところが

あったのね。

それが「奈良少年刑務所」であり

提案したのが作家・絵本作家でもある

寮美千子(りょう・みちこ)さん!

そこで起こった

物語以上にドラマティックな

物語が紹介されているのが

「あふれでたのは やさしさだった」。

子を持つ母としても

胸打たれ、いろいろ考えさせられた

この本と作者・寮美千子さんについて

今回は調べてみたので、

良かったら一緒に見ていってねー!!

スポンサーリンク

1.絵本作家・寮美千子(りょうみちこ)プロフィール

寮美千子(りょうみちこ)さんは

1955年、東京生まれ。

千葉県立千葉高等学校卒業後

中央大学文学部に進学するも中退。

外務省や広告制作会社、

フリーランスのコピーライターを経て、

1986年、童話

「ねっけつビスケット・チビスケくん」

第10回毎日童話新人賞を受賞!

でもね、実はこの本は

単行本化されていないのね。

物語の結末を「夢オチ」にするよう

審査委員長に求められたんだけど

なんと、これを固辞された寮さん!(;・∀・)

その結果、毎日童話新人賞受賞作の中で

この作品だけが単行本化されない…

ということになったんだとか。

納得いかないものはいかない、

長いモノにまかれない生き方

…ちょっとかっこいいわね~(*’ω’*)

後述するけれど

様々な童話や絵本を世に出してこられた

寮美千子さんは2004年講談社出版の

「楽園の鳥ーカルカッタ幻想曲」

2005年の第33回泉鏡花文学賞を受賞!

出典:Amazon

それをきっかけに翌年の2006年、

50才の7月を迎えた寮美千子さんは

神奈川県相模原市から奈良県奈良市の

旧市街「ならまち」の南端に、

ご主人と一緒に引っ越されたみたい。

地方都市で生活するというのは

寮美千子さんにとって

大きな夢だったようね。

関西人としては、寮美千子さんの

この選択が嬉しいところ!

…にしても場所を選ばず

仕事ができるって素敵よね~(*‘∀‘)♪

2.寮美千子(りょうみちこ)の絵本・童話作品

寮美千子さんは先に述べたデビュー作

「ねっけつビスケット・チビスケくん」、

そして泉鏡花文学賞受賞作

「楽園の鳥ーカルカッタ幻想曲」。

それ以外の作品として代表的なの

2009年、2010年、2012年と

毎日新聞大阪本社版に連載された

奈良を舞台にしたファンタジー童

「ならまち大冒険」シリーズ。

一作目は2010年に

「ならまち大冒険ーまんとくんと小さな陰陽師」として

単行本化されているわ。

絵本作家としてもご活躍で

「おおきくなったらなんになる?」

(絵・はたこうしろう)

出典:Amazon

「たいこちゃんのたいこ」

(絵・大島妙子)

「ほしのメリーゴーランド」

(絵・光二)

出典:Amazon

などが出版されているわねー。

さらに香港・台湾・韓国などの

海外でも翻訳出版されている

「どんぐりたいかい」(人形制作・所由紀子)

出典:Amazon

そして1999年に発表された

アイヌ民話をもとにした絵本

「おおかみのこがはしってきて」(画・小林敏也)

出典:Amazon

こちらは2000年の北海道指定図書にも

なっているわね。

ちなみに「どんぐりたいかい」

「おおかみのこがはしってきて」

「あふれでたのはやさしさだった」

の中でもキーとなる本!

気になった方は是非、

手に取ってみてねー!!

寮美千子さんの活躍は

子供向けの絵本に留まらず2013年には

歴史ノンフィクション絵本

「エルトゥールル号の遭難ー

トルコと日本を結ぶ心の物語」(絵・磯良一)

出典:Amazon

2015年の古事記をもとにした

「絵本古事記よみがえりーイザナギとイザナミ」(画・山本じん)

出典:Amazon

さらに小説家・作家としての活動も!

ラジオドラマ化された

「小惑星美術館(1990)」

「ラジオスターレストラン(1991)」

「雪姫ー遠野おしらさま迷宮(2010)」

などを発表。

この経歴を見るだけで

文学に造詣の深い懐の大きな女性で

あることが伺えるわね~!!

スポンサーリンク

3.寮美千子(りょうみちこ)の詩と絵本による「社会性涵養プログラム」

そんな凄い経歴を持ちつつ、

社会に対しても自ら活発な活動を

されている寮美千子さん。

2007~16年には

奈良少年刑務所において

「社会性涵養プログラム」のなかの

絵本と詩の教室の講師を

務めてられたのね。

その中で起きた

「奇跡」と思えるような変化の数々が

綴られているのが、この作品

「あふれでたのはやさしさだった

奈良少年刑務所 絵本と詩の教室(2018)」

出典:Amazon

ちなみに「涵養」とは…

「雨水や河川の水が地表から

地下に浸透して地下水となること」

から転じて

「水が土に自然に浸透していくように、

無理をせず、ゆっくりと養い育てる」

という意味があるとのこと。

「罪を憎んで人を憎まず」

「人」としての更正を目的に

刑務官や周囲の方々は

大きな愛を持って彼等を包み込む…。

ある意味、刑務所は彼らを守り育む

場所でもあるのね。。

とはいえ、社会に出た彼らを

待ち受けるのは決して

「優しい世界」ではないと思う。

世間という本当の戦場、

そして荒波の中で

生きていくだけの根っこを

「涵養」するための場。

それが奈良少年刑務所であり

「社会性涵養プログラム」であるのねー。

奈良少年刑務所の

「社会性涵養プログラム」については

同じく寮美千子さんが手がけた

「空が青いから白をえらんだのです」

「世界はもっと美しくなる」

の二つの詩集からも

そのパワーとポテンシャルを

伺うことができるわ。

こちらも要チェックよー!(・∀・)ノシ

4.寮美千子(りょうみちこ)「あふれでたのはやさしさだった」感想

この本はねー、

「どこかの誰かのこと」が書かれた

ものじゃないと思うのね。

子育てや教育に関わる人はもちろん

この世知辛いとも言える今の時代を

生きている人々みんなが

心打たれる内容なんじゃないかしら?

少なくともアフロは読むことで

大きな癒しをもらったような

気持ちになったわ…(T-T)

筆者である寮美千子さんの視点が秀逸。

「何かをしてあげよう」なんていう

上からの視点ではなく、

ただ淡々と、でも愛情深く、

その「場」で起こった出来事を

大切にひとつずつ綴り、

客観的視点から見守っておられるのね。

で、自分を振り替える…。

自分は親として、そんな風に

子どもと向き合ってきたかしら?

子どもが自ら育とうとする力を

ちゃんと「待つ」ことが

出来ているかしら…?

少年刑務所内で働いている方々が

また凄く素敵なのね。

一人一人の受刑者の人生と向き合い

どうすれば良くなるかを

真剣に考えておられる…

受刑者を「ここにいる『子』」と

呼ぶことからも、その向き合う姿勢が

滲み出て見えるわー。

どうしたら、この子たちが、

社会で少しでも上手く心地よく

生きていくことができるだろうか?

その行く末をたくさんの愛情と共に

心から寄り添って案じておられる

教育統括の細水令子さんの姿を、

寮美千子さんは

「マザー・テレサに似ている」

評されているわ。

寮美千子さんと一緒に

「社会性涵養プログラム」に立つ

竹下三隆教官や乾井智彦教官も素敵(*’ω’*)

みんな子どもたちと同じ視点に立ち、

同じ方向を向きながら、

一緒に寄り添って歩いている感じ。

「教育」の本来あるべき姿って

こういうものかもしれないわね。

教室のルールとして

  • 無理強いしない
  • 発言できない子がいても、助け舟を出さずにじっと待つ

というのがあって、アフロは個人的に

すごく反省させられたのね。

自分の子供に

「良かれと思って」やっていること…

「大丈夫。できるよ。やってごらん?」

なんてセリフ。。

それは結果的に

「待てない自分のため」のこと

だったんじゃないかなぁ、って。

「できない」って言った子に対して

「よく言ってくれた!おかげで

教室に新しい選択肢が生まれた。」

と声をかけてくれる教官。

そんな積み重ねが受刑者の

閉ざされた心を少しずつ開き、

大人に対する信頼を生んでいくのね。

「信頼」が下地にないと、

どんな言葉も心に響かない…

親としての在り方に、

凄くどきっとさせられた

エピソードだったわ。。

待って、待って、待って、待って…

その間にたくさんの葛藤を

自分の中で持ちながら…ようやく

最初の一歩を自ら踏み出すことが

できた時…その経験が自信となって、

どんどん自由に闊達になる子どもたち。

「涵養」の意味を改めて考えたわー。

「安心・安全な場」で

心からリラックスできたとき

子どもは本来持つ自分の力を

十分に発揮できる。。

子どもが伸びるための「空間」を持つ

広がりを持った家庭を、

自分はちゃんと作れているかしら?

「勉強しなさい」

「YouTubeばっかり見て!」

「時間が無いっ!!」

…うーん。。。( ̄▽ ̄;)

子どもを信頼し、

心に寄り添うことができると、

子どもは自立心を持ち、

意欲を出して、

みるみる成績もあがっていく

(家庭教師システム学院経営・長谷川満さん)

引用:あふれでたのは やさしさだった

…成績は、まぁ期待しないとして(笑)、

子どもの自立心・自律心を育むためにも

「信頼する」って本当に大切なことね。

・『自立』の反対語は『依存』ではなく『孤立』です。

・その人の困難を見極め、適切な支援ができれば、本人も周囲も楽になります。そうすれば、もう犯罪をする必要がなくなるんです。

(京都府木津川市の障がい者支援施設「いづみ福祉会」須川浩一)

出典:あふれでたのはやさしさだった

目標を達成して得られるものは『条件付き自信です』。『これができたおれに価値がある』という自信。

しかし、これはとても脆い。いったん失敗するとあっけなく崩れてしまいます。

(中略)

これとは別に『根源的自信』というものがあります。存在しているだけで、世界から肯定されているように感じるおおらかな心です。

これは、親から愛され、無条件に肯定されることによって育てられるものなんです。

『あなたが生まれてきてくれてうれしい』

『おかあさんもおとうさんも、あなたが大好き』

そんな気持ちがきちんと伝わっている子は、自分自身の存在を肯定できるようになります。

そんな子は、困難に遭遇してもくじけないし、失敗しても立ち直れるしぶとさを持つことができるんです。

(竹井教官)

出典:あふれでたのはやさしさだった

弱音や本音を吐けること、

吐ける場所があること。

そういう場所が人生を楽にする。

それはきっと、大人も同じだと思うのね。

まず大人が楽になることで、

伝染するように子どもも

楽になるんじゃないかしら?

必要なのは「指導」ではなく

「安心・安全な場作り」

教室にいたのは同じ境遇の「仲間」

だから、安心して

自己開示・自己表現が出来た。

そして表現することが一つの癒しとなり、

それを受け止めてもらえることで

更なる深い癒しとなった…。

改めて奈良少年刑務所の

「社会性涵養プログラム」って

凄いプログラムよね~。。

だけど、そこに至るまでの

子どもたち(受刑者)の境遇を思うと

複雑な思いになるのね。。

わたしは確信した。

「生まれつきの犯罪者」などいないのだと。

人間は本来、やさしくていい生き物だ。

それが成長の過程でさまざまな傷を受け、その傷をうまく癒やせず、傷跡が引きつったり歪んだりして、結果的に犯罪へと追い込まれてしまう。

教室を通してもう一つわかったことは、彼らがみな、加害者である前に被害者であったということだ。

困難な背景もないままに、持って生まれた性質だけで犯罪に至った子など、一人もいなかった。

昔、読んだ漫画「ぽっかぽか」の

「雪女」を思い出したのね。

悪い人はいない、

いるのはさびしい人だ。。

罪を憎んで人を憎まず…

とはいえ、家族が巻き込まれたら、

そんな広い心で受け止めることが

できるかどうか。。

だからこそ

「さびしい人」がいなくなるような

社会作りが必要になってくるのね。

人は人の輪の中で育つ

きっと、いつからでも。

社会が一つの有機的生物的な組織となって

子どもを守って育んでいける

社会になったら良いなーって

思ったアフロでした。

そのためにも、まずは

我が子を「待つ」広い心を

持てるようになると良いわねー( ̄▽ ̄;)

スポンサーリンク

5.寮美千子(りょうみちこ)が心奪われた奈良少年刑務所の魅力

ちなみに寮美千子さんの夫は

松永洋介さんというデザイナーで

この「社会性涵養プログラム」に関しても

一緒に関わっておられるわ。

お二人は奈良少年刑務所に対して

まずその外観…建築物として

大きな魅力を感じておられたよう。

古都奈良の坂の上に

少し異彩を放ちながら存在する

「奈良少年刑務所(旧奈良監獄)」

出典:奈良観光JP

その外観は一際目を引く

赤レンガの塀に囲まれた

ヨーロッパ風の建物。

近代建築としても美しく特異で、

イスラム風の丸屋根と、

イタリア風の軒下の飾り、

正面のアーチはイギリス風!!

青い空を背景にすると

その美しさがより際立って見えるわね。

設計は現在ジャス演奏家として活躍する

山下洋輔さんのおじいさまなんだとか。

周囲の景観を損なわない配慮と機能美…

うーん、さすがはアーティストファミリー!

そんな建物の美しさに惹かれて

結果的に「社会性涵養プログラム」に

関わることになったというのが

寮美千子さんと夫の松永洋介さん。

建物の保存を訴えるために奔走し、

2010年には写真家の上篠道夫さんを招き

写真を撮ったり写真展を行ったり…

その作品は

「写真集 美しい刑務所

明治の名煉瓦建築 奈良少年刑務所」

出典:Amazon

として出版もされているわ。

その活動の甲斐もあって2016年7月に

国の重要文化財の指定を受け

「旧奈良監獄」の名で保存されることに!

ところが、肝心の奈良少年刑務所は

翌年の2017年3月に廃庁されることに

なってしまったのね…!!(゚Д゚;)

2017年の3月に、この奈良少年刑務所は

109年の歴史を閉じて廃庁に。

なんだか切ないわね…。

今は国の手を離れ、改修工事中。

2021年に星野リゾート傘下のホテルとして

生まれ変わることが計画されているそうよー。

スポンサーリンク

まとめ

いかがだったかしら?

寮美千子さんと様々な人が手がけた

奈良少年刑務所の中の厚生プログラム

「社会性涵養プログラム」。

そして、その中で起きた小さな奇跡が

綴られた、寮美千子さんの

「あふれでたのは やさしさだった」

人を…人の心を育むって

本当に根気と「待つ」ことが必要ね。

普通の子育てでもそう。

ましてや、心に傷を負った

子どもたちなら尚のこと。

「絵本」や「詩」を使って

自己表現を行いながら、

人としての繋がりを取り戻していく

このプログラムは、改めて

育つ環境が与える子どもへの影響

…そして言葉の力を強く感じるわね。

重要文化財「旧奈良監獄」として残るも

2017年に廃庁となりホテルとして

生まれ変わることになった

奈良少年刑務所。。

…それはそれで魅力的なことでもあるけど、

「奈良少年刑務所」という

美しい箱の中で行われていた

「社会性涵養プログラム」という

それ以上に美しい活動について

もっと多くの人が知ることになると

良いなーって思うアフロでした。

今日も最後まで読んでくれて

ありがとうねー!!