ぼくはしんだ…谷川俊太郎・合田里美の絵本「ぼく」感想。NHKが子供の自死の絵本に迫る!

3.ぼくはしんだ・じぶんでしんだ…子供の自死がテーマの絵本「ぼく」の感想

この絵本を読み終わった後、

まずは、ため息しかでなかったのね。

「ぼくはしんだ じぶんでしんだ」

衝撃的なはじまりから

一気にこの世界に引き込まれたわ。

「自死」をテーマにした絵本だけれど

その「死」を想起させるより、

「ぼく」という少年に対して

本当に色々な想いが溢れてくるの。

合田さんの描く、透明感のある世界。

それは、この世界の…、

「ぼく」の世界の美しさと儚さを

同時に感じさせ、何とも言えない

切ない気持ちになるのね。

群れているのに圧倒的な孤独を抱えている…。

「ぼく」は、いつかの「わたし」。

合田さんが描く日常やイメージが

あまりに自然すぎて、

あの頃の表現できない無力感が

甦ってくるような気がしてくる。

正直…死にたい、と思っている時、

人のどんな励ましの言葉も

空虚に感じられて響かないのね。

上から「元気出して行こうぜ!」

では、ダメなのよ…。

共感も…嬉しいけれどちょっと違う時もある。

言葉にならない想い・感情が

言葉に…そして絵にされることで、

自分の悲しみを少し俯瞰できるというか…。

理解されない孤独。

だけど、それを抱えているのが

自分だけじゃないという気付き。

それによって、

ひたすら転げ落ちる滑り台で

ふと立ち止まれる気がするのね。

また作品の中に出てくる

スノードームが凄く印象的。。

スノードーム

幻想的な透明感、

めくるめく躍動感、

そして圧倒的な孤独感・閉塞感。

凄く色んなものを象徴し、

色んなことを連想させる

生と死を考える上で

最高のモチーフね。

そして、最後に出てくる

空っぽのスノードーム。。

失われたのは「ぼく」であり、

「世界そのもの」…。

マルチバースという視点から見ると

失われたのは「ぼく」の持つ

宇宙そのものかもしれない…。

失われたものは、いったい、

どこへ行ってしまったんだろう?

その美しさと儚さが、

胸を締め付けるわ…。

読み終わって浮かんだのは、

「メメント・モリ(死を忘れるな)」

という言葉…。

それは同時に、今、

生きていることを再確認する言葉。

言葉で「生きよう」というのは

簡単だけど、それじゃあ伝わらない。

この絵本を読んで、

自分の中に湧き上がった想い…

それを見極めよう・掬い取ろうとする

プロセスこそが助けになるのかも。

作中に挿入されている

谷川俊太郎さんの詩、

「いきていて」が

また良い…(*T^T)

小学校低学年の自分の子どもに

この絵本を見せるかどうか

正直、今は迷っているけれどね…。

夢と希望だけの子供時代を抜けて

ちょっと複雑な思春期を迎え、

世界の裏表や明るい顔をした闇に出会い

もどかしい想いを

ひとりで持て余して苦しむ時、

茫洋と広がる圧倒的に不安定で

不確実な未来に対して足がすくむ時、

この本が息子の傍にあることは

救いになるんじゃないかな…って

ふっと思ったアフロよ。

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4.NHK・ETV特集にて絵本「ぼく」の誕生に迫る!

さて、この話題作絵本

「ぼく」が生まれるまでの過程が

2022年2月12日23時からの

NHK・EテレのETV特集にて放送!!

90歳になった詩人谷川俊太郎が今年新たな絵本を出した。テーマは「子供の自死」。リモートで行われた絵本作りの2年間、絵を描く合田里美に谷川は何度も描き直しを求めた。意図は何?合田は必死に探る中で、谷川の死への思索、そして子供たちへのメッセージを見つけていく。主人公の自死を読者が「わかったつもり」になることを詩人は拒否していた…。合田の作画をアニメ化し、特異な絵本の誕生を追体験する。

出典:NHK

これは見逃せないわ…!!(,,ΦωΦ,,)

先日のNHKハートネットTVでの

「けんちゃんのもみの木」

放送でも思ったけれど、

絵本のバックグラウンドを知ると

同じ本を読んでいても、

心に入ってくる深度が

全く違ってくるのね~!

ちなみに、この絵本の編集を担当し、

合田さんを見つけた筒井大介さんも

この番組に登場。

筒井大輔さんの手掛けた絵本は

あのスズキコージさんの

「ブラッキンサンダー」

出典:Amazon

ミロコマチコさんの

「オオカミがとぶひ」など

出典:Amazon

数々の絵本の大きな賞を

獲っていることも見逃せない。

そんな筒井大介さんが手がける

この死を取り扱った絵本シリーズ

「闇は光の母」は、

「ぼく」を含めて5冊あるのね。

そのラインナップはコチラ。

【わたしはしなないおんなのこ】

わたしはしなないおんなのこ

出典:Amazon

【クヌギがいる】

クヌギがいる

出典:Amazon

【ほっきょくでうしをうつ】

ほっきょくでうしをうつ

出典:Amazon

【スープとあめだま】(3月2日発売)

スープとあめだま

出典:Amazon

いずれも見ごたえのある

凄い作品ね…。

その中でも際立つのが、今回の作品。

谷川俊太郎さんが

「こんな絵本の作り方をしたのは初めて」

という絵本「ぼく」…。

その制作過程が見られる今回の放送

「ぼくはしんだ じぶんでしんだ

~谷川俊太郎と死の絵本」!

これは見逃せないわね~!!

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まとめ

いかがだったかしら?

岩崎書店の死をめぐる絵本

「闇は光の母」シリーズ第3弾

「ぼく」(谷川俊太郎/合田里美)

「自死」という重いテーマを

「絵本」で描くという実験的で

挑戦的な作品に取り組まれた

御年90才の谷川俊太郎さんは

やっぱり巨匠そのものね!

そして、その挑戦を

真っ向から受け止め、

もの凄い世界を創り上げた

絵・担当の合田里美さんも

タダモノではないわ…( ̄ω ̄;)

でも、そこにあるのは、

子供たちに向けての

真摯なメッセージなのね。

行き場のなくなった

子供たちの心を受け止める場を

作りたい…そんな想いから

この絵本は生まれたんじゃないかしら?

先進国の中でも、日本の子供の

自殺率はワースト1位…

飲み物も食べ物も

着るものも寝るところもある…

それなのに追い詰められる

子供の心…その闇は

どこから生まれているのかしら?

過剰な情報や

コロナ禍による生活の変化…

それ以外も個々人に

色々な悩みや苦しみがあるわね。

それ自体は全て悪いとは思わないけれど、

上手く自分の中で処理しきれない子が

年々増えているような気が

なんとなくするのよね…。

それは、なんとなく

いびつな生き方になってしまった

大人の姿を映しだして

いるような気もするわ。

この本を含む死をめぐる絵本

「闇は光の母」シリーズによせて

谷川さんはこんな推薦文を

書かれているのね。

死を重々しく考えたくない、かと言って軽々しく考えたくもない、というのが私の立場です。死をめぐる哲学的な言葉、死をめぐる宗教的な言葉、果ては死をめぐる商業的な言葉までが氾濫している現代日本の中で、死をめぐる文と絵による絵本はどんな形でなら成立するのか、この野心的な企画はそれ自体で、より深く 死を見つめることで、より良く生きる道を探る試みです。

出典:岩崎書店

「自死」ということを

センセーショナルに描くのではなく

大切なのは自分自身の命に、

そばにいる大切な人の命に、

そして自分をとりまく多くの命に、

目を向けて、生きること自体に

立ち返ることなのかもしれないわね。

死から眼をそらしてはいけない。

きちんと自分の人生を生きるために…

そんなメッセージを、

この絵本から受け取ったような

気がするアフロよ。

今日も最後まで読んでくれて

ありがとうねー!

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